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冬の寒さもこれから本格的な季節に向かう朝は冷え込みが厳しく、人間の日課である洗面器で顔を洗うのさえ億劫になる毎朝である。
裏口の門の扉を開ける音と共に誰かが忍び寄り窓ガラスを叩き戸を開けてくれと言う声がした。
「外は寒いかぁ」
「冬だから風が無くても自転車が風を作るから身に凍みるわぁ」と天満はこの世に対して何か文句でもあるのかという四角張った面構え、への字の口を少し震えさせながら言った。
「お前も根性あるなぁ、自転車に乗る時ぐらい毛糸の手袋ぐらい嵌めてこいよぉ」
「ハンドルに毛糸は滑るから・・・今日の朝食の担当は誰やぁ、湯ぐらい沸かしときやぁ」と天満は薬缶に水を入れ、ガスコンロに腹が立っているのか、寒さで細かな動作が省かれているのか音を立てて置き、徳用マッチを何度か摺り火を付けながら言った。

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大家さんと次郎らが下宿する離れの間には造園業をやっている関係でかなりの植木類が占める敷地がある。
離れは二階に佐藤・川井・大塚、一階は次郎が住み残りの2人分の広さの部屋は以前は材料・物置き場だったが、今は空室で次郎たちがラウンジといって自由に使わせてくれている。
大学の仲間・故郷の友人・バイトで知り合った人を呼んでマージャンの面子が二組出来るほどに静かな時が無い生活を送っている。
大家さん達夫婦には子供がいなくて、大学生たちを我が子というより弟分として面倒を見てくれて大学の授業差し障り無い程度に造園関係のバイトをさせてくれる。

クラス会も2年ぶりに見た顔もあったが、懐かしさより過ぎ去り師高三時代の日常の会話の延長であった。
次郎が男仲間と騒いでいる時に僅かな空白があったとき節子がその時間の隙間に一言二言伊勢嬢と奈良娘の事を聞いてきた。
その場ではそれ以上話は深入りできずに終わったが、一体何を言おうとしたのが帰省中一人でいるとに気に掛かった。
上京後は学年末テストに追われ、次郎が下宿している仲間達との約束、試験前後一週間はマージャン禁止で静かな雰囲気の下宿生活となった。

大きい文字文字色強調文次郎はふと気付いた、郷愁を持ちつつ帰省をしたが。
高校のクラス会は中学のそれと違ったことを、この時代高校進学は50%を超えたぐらいである。
あの無邪気に遊んだ数人の中卒の竹馬の友は遠くに去り、今は会うことも無いことを。         線路の上に並び誰が最後まで勇気があるか度胸試しをし貨物列車を停めた事、春に海岸で魚類を取り鍋で空腹を満たした事、紀伊の山の中を椎の実ギンナンを取りに出かけた頃夏みかんを農家の人の目を盗み追いかけられた頃等、此処にいるクラス仲間と違った思い出が去ってしまっていた。

女性人の方といえば少しはセーラー服におさらばして2年もたつと、服装や態度に大人びたところが見える。世間では女性は2・3才同級生の男より精神年齢が上と言われる。
しかし、産毛がまだ残り完全な大人と言うものではなく、外的に対抗する防御が若干弱い感じがする。
仲居さんが追加注文のビールを運んできて「急にうるさくなったわねぇ、行儀良くせんとあかんよぉ」と戯れている子供の喧嘩を分けるように仲間の間を、親心に似た言葉を投げかけながら言った。
次郎が「仕方ないわぁ、久しぶりやからぁ」と次郎がふざけ半分で仲居さんの着物の裾を捲る行為をすると、
「これ、いやらしい」とお盆で頭を殴られると同時に皆が大笑いをした。
こういう悪ふざけも場所や人間関係の濃淡にはつきものであり、次郎はそこの辺りを心得ており、返って場の雰囲気を和やかにするものである